ダム水路主任技術者免状とは?1種と2種の違いと取得方法

ダム水路主任技術者免状とは?1種と2種の違いと取得方法についてをまとめました。

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ダム水路主任技術者とは

ダム水路主任技術者は、電気事業法に基づき、水力発電所の水力設備(ダム、導水路、サージタンク及び水圧管路等)の工事、維持及び運用に係る保安の監督を行う者であり、安全の確保及び電力の安定供給を図るのが目的の資格です。
ただし、電気主任技術者と違い筆記試験はなく、一定の実務者経験を有している者が産業保安監督部で面談試験を受けて合格することで取得できます。

設置する水力発電設備が自家用電気工作物であって、電気事業法第43条第2項に基づく経済産業大臣の許可を受けた場合、ダム水路主任技術者の免状を有しない者を、主任技術者として選任(許可選任)することができる。

水力発電所の関係法令等をまとめると以下のとおりです。

分類 関係法令等
法律 電気事業法
政令(施行令) 電気事業法施行令
省令(施行規則) 電気事業法施行規則電気関係報告規則発電用水力設備に関する技術基準を定める省令(水技) など
告示・訓令・通達 電気事業法の解説、電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)、発電用太陽電池設備に関する技術基準の解釈(大技解釈)、発電用水力設備の技術基準の解釈について(水技解釈)、電気設備の技術基準の解釈の解説
その他 「電気事業法の規定に基づく主任技術者資格等に関する省令」及び「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」に係るダム水路主任技術者の学歴について
水力発電設備の安全規制について(平成30年度ダム水路主任技術者会議)
ダム水路主任技術者免状に関する実務経験証明書等の記載について(九州産業保安監督部)
農業水利施設を活用した小水力発電について
ダム水路主任技術者選任に関する手続き(中国産業保安監督部)

上記のうち、法律・政令・省令については電気事業法等(経済産業省HP)、告示・訓令・通達については電気事業法 告示・内規等(経済産業省HP)で条文が公開されています。
法律的な詳細は「法規」のページにまとめています。

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ダム水路主任技術者の選任にあたっては、免状の交付を受けている者から選任するのが原則である。
しかし、一定の条件を満たすものについては、経済産業大臣の許可を受けて免状の交付を受けていない者を選任することができる。

免状種別 保安監督の範囲
第一種ダム水路主任技術者 水力発電所(小型のもの又は特定施設内に設置されるものであって別に告示するものを除く。)の工事、維持及び運用 (電気的設備に係るものを除く。)
第二種ダム水路主任技術者 水力設備(小型のもの又は特定の施設内に設置されるものであって別に告示するもの又はダム、導水路、サージタンク及び放水路を除く。)、高さ70m未満のダム並びに圧力588kPa未満の導水路、サージタンク及び放水路の工事、維持及び運用 (電気的設備に係るものを除く。)
許可選任 ・出力500kW未満の水力発電所の設置工事の事業場又は直接統括する事業場
・出力500kW以上2,000kW以下の水力発電所(ダム高さ15m未満の水路式)の設置工事の事業場又は直接統括する事業場

【電気事業法施行規則第52条1項】

概要
水力発電所の設置の工事のための事業場 第一種電気主任技術者免状、第二種電気主任技術者免状又は第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者及び第一種ダム水路主任技術者免状又は第二種ダム水路主任技術者免状の交付を受けている者
二 火力発電所 (略) (略)
三 燃料電池発電所、変電所、送電線路又は需要設備 (略) (略)
四 水力発電所であって、高さ15m以上のダム若しくは圧力392kPa以上の導水路、サージタンク若しくは放水路を有するもの又は高さ15m以上のダムの設置の工事を行うもの 第一種ダム水路主任技術者免状又は第二種ダム水路主任技術者免状の交付を受けている者
五 火力発電所及び燃料電池発電所 (略)
六 原子力発電所 (略)
七 発電所(原子力発電所を除く。)、変電所、需要設備又は送電線路若しくは配電線路を管理する事業場を直接統括する事業場 第一種電気主任技術者免状、第二種電気主任技術者免状又は第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者、その直接統括する発電所のうちに四の水力発電所以外の水力発電所がある場合は、第一種ダム水路主任技術者免状又は第二種ダム水路主任技術者免状の交付を受けている者及びその直接統括する発電所のうちに五のガスタービンを原動力とする火力発電所以外のガスタービンを原動力とする火力発電所(小型のガスタービンを原動力とするものであって別に告示するものを除く。)がある場合は、第一種ボイラー・タービン主任技術者免状又は第二種ボイラー・タービン主任技術者免状の交付を受けている者
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免状交付手続き

産業保安監督部の資料によれば、以下のフローで手続きが進むようです。

① 産業保安監督部への申請意向の連絡
② 「実務経験証明書」及び「高さ15m以上の発電用ダムの工事、維持又は運用の実務内容についての具体的な説明書」の記載内容の確認
メール等により証明書及び説明書(第1種のみ必要)を申請者が送付し、産業保安監督部が実務経歴が具体的に記載されているかなど確認
③ダム水路主任技術者免状交付申請
④ 面談(産業保安監督部が申請者の証明書(第1種のみ必要)に記載された経験を有しているか、主任技術者にふさわしい知識を有しているかなどについて確認)
⑤ ダム水路主任技術者免状交付

【電気事業法】

(主任技術者免状)
第四十四条 主任技術者免状の種類は、次のとおりとする。
(略)
四 第一種ダム水路主任技術者免状
五 第二種ダム水路主任技術者免状
(略)
2 主任技術者免状は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、経済産業大臣が交付する。
一 主任技術者免状の種類ごとに経済産業省令で定める学歴又は資格及び実務の経験を有する者
(略)

【参考資料】
関東東北産業保安監督部HP
中国四国産業保安監督部四国支部HP
中部近畿産業保安監督部近畿支部HP

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要件

 電気事業法の規定に基づく主任技術者の資格等に関する省令第1条の表(抜粋)

第一種ダム水路主任技術者免状

学歴又は資格 実務経験内容 経験年数
①学校教育法による大学又はこれと同等以上の教育施設において、土木工学に関する学科を修めて卒業した者 水力設備(電気的設備を除く。以下同じ。)又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後高さ15m以上のダム(発電用のものに限る。)の>工事、維持又は運用に関する経験3年以上を含む5年以上
②学校教育法による大学又はこれと同等以上の教育施設を卒業した者(①に掲げる者を除く。) 水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後高さ15m以上のダム(発電用のものに限る。)の工事、維持又は運用に関する経験3年以上を含む9年以上
③学校教育法による短期大学若しくは高等専門学校又はこれと同等以上の教育施設において、土木工学に関する学科を修めて卒業した者 水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後高さ15m以上のダム(発電用のものに限る。)の工事、維持又は運用に関する経験4年以上を含む6年以上
④学校教育法による短期大学若しくは高等専門学校又はこれと同等以上の教育施設を卒業した者(3に掲げる者を除く。) 水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後高さ15m以上のダム(発電用のものに限る。)の工事、維持又は運用に関する経験4年以上を含む10年以上
⑤学校教育法による高等学校又はこれと同等以上の教育施設において、土木工学に関する学科を修めて卒業した者 水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後高さ15m以上のダム(発電用のものに限る。)の工事、維持又は運用に関する経験5年以上を含む10年以上
⑥学校教育法による高等学校又はこれと同等以上の教育施設を卒業した者(⑤に掲げる者を除く。) 水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後高さ15m以上のダム(発電用のものに限る。)の工事、維持又は運用に関する経験5年以上を含む14年以上
⑦学校教育法による中学校を卒業した者 水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後高さ15m以上のダム(発電用のものに限る。)の工事、維持又は運用に関する経験10年以上を含む20年以上

第二種ダム水路主任技術者免状

学歴又は資格 実務経験内容 経験年数
①学校教育法による大学、短期大学若しくは高等専門学校又はこれと同等以上の教育施設において、土木工学に関する学科を修めて卒業した者 水力設備の工事、維持又は運用 卒業後3年以上
②学校教育法による大学、短期大学若しくは高等専門学校又はこれと同等以上の教育施設を卒業した者(①に掲げる者を除く。) 水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後5年以上(3年以上の水力設備に係る経験を含むものに限る。)
③学校教育法による高等学校又はこれと同等以上の教育施設において、土木工学に関する学科を修めて卒業した者 水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後5年以上(3年以上の水力設備に係る経験を含むものに限る。)
④学校教育法による高等学校又はこれと同等以上の教育施設を卒業した者(③に掲げる者を除く。) 水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後7年以上(3年以上の水力設備に係る経験を含むものに限る。)
⑤学校教育法による中学校を卒業した者 水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の設備の工事、維持又は運用 卒業後12年以上(8年以上の水力設備に係る経験を含むものに限る。)
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【補足】土木工学に関する学科 等について

「電気事業法の規定に基づく主任技術者資格等に関する省令」及び「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」に係るダム水路主任技術者の学歴についてで、以下のように説明されていました。

ダム水路主任技術者の学歴については、「電気事業法の規定に基づく主任技術者資格等に関する省令」(以下「主任技術者省令」という。)及び「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」(以下「内規」という。)に規定しているところであるが、これら規定のうち土木工学に係る学歴については「土木工学に関する学科を修めて卒業した者」(主任技術者省令)、「土木工学の課程を修めて卒業した者」(内規)、「(高等学校以上において土木工学の課程を修めて卒業した者と)同等以上の知識及び技能を有すると認められる者」(内規)としている。
今回、「土木工学に関する学科を修めて卒業した者」、「(高等学校以上において土木工学の課程を修めて卒業した者と)同等以上の知識及び技能を有すると認められる者」について、その者が修得すべき土木工学に関する履修科目を例示することにより、ダム水路主任技術者の学歴の確認に資することとした。

1.「土木工学に関する学科」とは、工学系の学科名で「土木工学科」をいうが、大学等の学部学科名において、昨今、土木工学という名称を用いなくなりつつあり(例えば、大学においては、土木工学科のカリキュラムを見直し、都市工学科、環境工学科、等の名称に変更しているところもある、また、農業土木学科のカリキュラムを見直し、生物環境工学科、等の名称に変更しているものがある。)、授業カリキュラムも多岐にわたっていることから、土木工学に係る学歴については、学科名のみで判断することが適切でなくなってきている。このため、大学、高等専門学校、高等学校等において、土木に関する一定の科目を修得して卒業したことが確認できれば、「土木工学に関する学科を修めて卒業した者」と認めることとする(例えば、農業土木では、その教育科目の中に土木工学に関する科目も含まれている場合がある。)。

2.なお、学科名だけでは土木工学に関する科目を履修したと判断できない場合、申請の際に卒業した学校で発行される修得学科目証明書等を添付させるなど、土木工学に関する一定の科目を修得したことを確認していくことが必要である。

3.また、「(高等学校以上において土木工学の課程を修めて卒業した者と)同等以上の知識及び技能を有すると認められる者」(内規2.(2)②参照)には、土木工学科の課程を卒業していないが、土木に関する一定の科目を履修し卒業したことが確認できる場合には、認めてもよい(例えば、農業高等学校の教育課程には、農業科学科、園芸科学科、畜産科学科、農業土木科、食品科学科などがあるが、農業土木科では農業土木設計、農業土木施工、測量などが履修科目となっている。)。

学科名(授業科目)
(1) 材料力学に関する科目(材料力学、構造力学、等)
(2) 構造工学に関する科目(橋梁工学、コンクリート工学、等)
(3) 土質工学に関する科目(土質力学、土質工学、等)
(4) 河海工学に関する科目(水理学、河川工学、港湾工学、等)
(5) 交通工学に関する科目(道路工学、鉄道工学、等)
(6) 衛生工学に関する科目(上下水道学、等)
(7) 材料及び施工に関する科目(測量学、施工法、土木材料、等)
(8) 土木計画に関する科目(交通計画、都市計画、国土計画、農村計画、等)
(9) その他実習等(土木設計、製図、測量実習、等)
(注)学校教育法による大学において履修する土木工学科の主要科目を例示した。大学においては、上記例示から7科目の修得を必要とする。なお、学科名は必ずしも土木工学科である必要はなく、例えば、都市工学科、環境工学科、農業土木学科など土木に関する一定の科目が含まれる学科についても、その修得科目により判断をしてもよい。また、学科名だけでは土木工学に関する科目を履修したと判断できない場合、申請の際に、卒業した学校で発行される修得学科目証明書等を添付させるなど、適切に審査することが必要である。
学校教育法による高等専門学校、高等学校等において履修する土木工学科の科目は大学ほど専門化されていない場合もあり、1教科で複数の授業科目を含んでいる場合もある。このため、申請の際に、教科や授業科目の内容について、卒業した学校で発行される修得学科目証明書等を添付させるなど、適切に審査することが必要である。この場合、高等専門学校、高等学校等においては、上記例示から4科目の修得を必要とする(例えば、農業高等学校の教育課程には、農業科学科、園芸科学科、畜産科学科、農業土木科、食品科学科などがあるが、農業土木科では農業土木設計、農業土木施工、測量などが履修科目となっている。また、農業土木設計の教科については、文部科学省の学習指導要領によれば、上記科目の例示のうち(1)、(2)、(3)、(4)にわたる内容となっており、履修内容に応じた複数科目の修得についても確認することが必要である。)。
なお、大学等の土木工学科等を卒業した者が、単位の関係で土木に関する一定の科目が履修されていない場合であっても、例えば、高校で履修した土木に関する科目を合わせると一定の科目を履修したと考えられるなど、履修科目の取得状況によっては、「(高等学校以上において土木工学の課程を修めて卒業した者と)同等以上の知識及び技能を有すると認められる者」に該当する場合もあるので注意されたい。

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【参考】ダム水路主任技術者制度の見直し履歴

時期 改正箇所 概要
H23,3,14 電気事業法施行規則【改正】(48条(一般用電気工作物)、52条(主任技術者の選任)、56条(主任技術者の免状)、別表第二(工事計画)) ・一般用電気工作物を、「10kW未満→20kW未満」とし、最大使用水量を「1㎥/s未満」と限定。
・小型のもの、特定の施設内に設置されるものはDS選任
・工事計画届出を不要とした。
H23,3,14 平成24年経済産業省告示第100号<小型告示>【改正】 ・DS選任・工事計画届出が不要な小型のものは「ダムなし、200kW未満、1㎥/s」
・特定の施設内に設置されるものは「水道法、下水道法、工業用水道事業法の導水・浄水・送水施設」と新規に規定。
H23,3,30 主任技術者制度の解釈及び運用(内規)【改正】 ・派遣労働者、見なし設置者による選任を可とした。
・親子会社での兼任を可とした。
H25,1,28 電気事業法の規定に基づく主任技術者の資格等に関す ・ダム水路主任技術者の学歴要件として、高卒認定試験合格者を追加。
H26,3,31 平成24年経済産業省告示第100号<小型告示>【改正】 ・DS選任・工事計画届出が不要な「特定の施設内に設置されるもの」に「土地改良法の農業用排水施設(ダムを除く)(ただし、土地改良事業を施行する者に限る。)」を追加。
H26,3,31 主任技術者制度の解釈及び運用(内規)【改正】 ・DSの許可選任要件である高校土木学科卒業と同等なものとして、「技術士」「土木施工管理士」を追加
H26,3,31 主任技術者制度の解釈及び運用(内規)【解釈の明確化】 ・DSの許可選任要件である「土木工学に関する学科」の解釈に関し、「土木に関する一定の科目を履修(都市工学科、農業土木科など)」であれば可とした。
H26,9,30 主任技術者制度の解釈及び運用(内規)【改正】 ・DSの許可選任要件である「500kW未満」を「2,000kW以下」へ拡大。
H27,4,30 電気事業法施行規則【改正】(48条 一般用電気工作物)平成27年経済産業省告示第99号<小型告示>【改正】 ・DS選任・工事計画届出が不要な「特定の施設内に設置されるもの」の「土地改良法の農業用排水施設(ダム除く)」について「ただし、土地改良事業を施行する者に限る。」を削除。
・この場合20kW未満であれば一般用電気工作物とした。
H28,3,22 主任技術者制度の解釈及び運用(内規)【改正】 ・DS統括制度及び兼任制度を明確化(電気主任技術者と同様の規定)
H28,3,22 電気事業法施行規則【改正】(52条、52条の2、53条(外部委託)、53条の2(兼任))
平成27年経済産業省告示第249号【改正】
主任技術者制度の解釈及び運用(内規)【改正】
・DS外部委託制度の創設(電気主任技術者と同様の規定)
H28,12,26 主任技術者制度の解釈及び運用(内規)【改正】 ・DSの許可選任要件である「経済産業省が行う講習」を、他の法人が開催することもできるよう範囲を拡大。

※水力発電設備の安全規制について(平成31年2月13日 経済産業省 産業保安グループ 電力安全課 水力発電設備担当)のp.7より引用

【電験3種】発電用水力設備に関する技術基準を定める省令(水技省令)
電験3種試験の参考情報として、「発電用水力設備に関する技術基準を定める省令(水技省令)」についてまとめました。
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