電験3種の電力分野における電力分野・水力発電所の発電出力の対策・計算問題についてまとめました。
水力発電所の発電出力・揚水出力の計算式
発電出力の計算式
● 水の質量m[kg]、水の位置が高さH[m]、重力加速度g[m/s2]とすると、水の仕事量W[J]=mghになります。
● 仕事量[J]は単位時間当たりのエネルギー[W/s]ですので、水が1秒間に行う仕事量P[W]=mghになります。
● 水の密度=ρ=1000kg/m3です。つまり、1m3の水の重さは1000[kg]です。
よって、流量Q[m3]の水の質量m=ρQ=1000Q[kg]になります。
● 重力加速度g=9.8のとき、流量Q[m3]の水が高さH[m]の位置から落下するときの仕事量P=ρgQH=1000×9.8×QH[W]=9.8QH[kW]となります。
※Pの単位は、ρ、g、Q、Hそれぞれの単位を掛け合わせたとなる。
● この仕事量Pは、水力発電所の理論出力となります。
項目 | 概要 |
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理論水力 | |
水車出力 | |
発電機出力 | |
年間発電電力量 |
※α:利用率
※1年=24時間=365日=8760時間
パラメータ | 概要 |
---|---|
総落差Ha[m] | 理論的な位置エネルギーを保有している高さ |
損失落差hg[m] | 摩擦などによる位置エネルギー損失分の高さ |
有効落差H[m] | 損失分を差し引いた位置エネルギーの高さ |
流量Q[m3/s] | 単位時間にある断面を通過する水量。水が1秒間あたりに断面A[m2]を速度v[m/s]で通過するとき、流量Q=Av[m3/s]。例えば水路の流量を測定するとき、水路の断面積は決まっているので、水路を流れる水の速度を測定すれば、流量も計算できます。 |
水車効率ηw | 位置エネルギーを機械エネルギー(回転エネルギー)に変換する効率 |
発電機効率ηg | 機械エネルギー(回転エネルギー)を電力に変換する効率 |
揚水発電所の電力
項目 | 概要 |
---|---|
揚水発電所(ポンプ水車式) | 発電電動機とポンプと水車を兼用できるポンプ水車を利用した方式。水車とポンプの性能をそれぞれ最適に設計できるため、国内で設計される揚水発電所はほとんどこの方式。 |
揚水発電所(タンデム式) | 発電機と電動機を共用し、同一軸に水車とポンプをそれぞれ直結した方式 |
必要揚程[m] | |
所要動力[kW] | |
所要電力量[kWh] |
※総落差H0[m]、揚水時の損失水頭hp[m]、揚水時の流量Qp[m3/s] 、ポンプ効率çp、電動機効率ηm、揚水時間Tm[h]とする。
【例題】 水力発電所(貯水池あり)の発電計画
【問題】
貯水池を有する水力発電所がある。流域面積Aが15,000[km2] 、年間降水量Wが750[mm]、流出係数Kが0.7のとき、年間の平均流量Q[m3/s] を求めよ。
また、求めた平均流量Qを水力発電所の最大使用水量とし、有効落差Hが100[m]、水車と発電機の総合効率ηが80%、発電所の年間の設備利用率αが60%のとき、年間発電電力量の値 [kW⋅h] を求めよ。
【回答】
● 貯水池の流域面積A、年間降雨量W、流出係数Kのとき、1年間で水力発電所で利用される水量V[m3]は以下のとおり。
(1)
● 年間の平均流量Q[m3/s]は、年間水量V[m3]を1年間の秒数(365日×24時間×60分×60秒)で割れば求まる。
(2)
● 最大使用水量Q=250[m3/s]、有効落差H=100[m]、総合効率η=0.8なので、水力発電所の定格出力P[kW]は以下のとおり。
(3)
● 発電所の年間発電電力量の値W[kW⋅h]は1年間の時間(365日×24時間)と年間の設備利用率 α=0.6 で掛けて求まる。
(4)
【例題】調整池式発電所の出力
以下の仕様の調整池をもつ水力発電設備がある。
①運用に最低限必要な有効貯水量V[m3]はいくらか。
②オフピーク運用中の発電機出力[kW]はいくらか。
仕様 | 概要 |
---|---|
最大使用流量 | Qp=10[m3/s]で12-18時の6時間運用(一日のピーク継続時間t=6[h]) |
自然流量 | QN=6[m3/s] |
オフピーク運用中の使用流量 | Q0=3[m3/s]で12-18時以外の18時間運用 |
水車の有効落差 | H=100m |
水車効率 | 90 % |
発電機効率 | 96 % |
【解答】
●12時〜18時の6時間がピーク運用なので、18時の時点で貯水量が0になっても良い。
よって、ピーク運用時の最大使用水量QP=10[m3/s] と取水する自然流量QN=6[m3/s]の差である4[m3/s]を6時間(3600×6秒)だけ流せる水を調整池の水(有効貯水量V)で補う。
(5)
● 1日の「調整池に取水する量」 = 「発電所での使用水量」は等しくなるので、
(6)
上式にを代入すると、
となる。よって
(7)
【例題】揚水発電所の入出力、効率
以下の仕様をもつ揚水発電所をがある。この揚水発電所における発電出力の値 [kW] ,揚水入力の値 [kW] ,揚水所要時間の値 [h] 及び揚水総合効率の値 [%] を求めよ。ただし運転中の総落差が変わらず,発電出力,揚水入力ともに一定で運転するものと仮定する。
項目 | 概要 |
---|---|
総落差 | H0=400m |
発電損失水頭 | hG=H0の3%(12m) |
揚水損失水頭 | hP=H0の3% (12m) |
発電使用水量 | QG=60m3/s |
揚水量 | QP=50m3/s |
発電運転時の効率 | 発電機効率ηG×水車効率ηT=87% |
ポンプ運転時の効率 | 電動機効率ηM×ポンプ効率ηP=85% |
発電運転時間 | TG=8h |
●有効落差H=H0-hg=388[m]より、発電出力PGは
(8)
●必要揚程HP=H0+hp=412mより、揚水入力PMは
(9)
●「発電に利用した水量」=「揚水に使用した水量」は等しいため、揚水所要時間TMは、
(10)
●揚水総合効率は、
(11)
【例題】揚水発電所の電力量・流量の計算
以下の仕様の揚水発電所について、①②の問に答えよ。
【仕様】
揚程:450 m
ポンプ効率:90 %
電動機効率:98 %
①下池からV=1800000の水を揚水するのに電動機が消費する電力量Wm [MW⋅h]を計算せよ。
※水の密度を1000kg/m3、重力加速度を9.8m/s2とする。
※揚水により揚程及び効率は変わらないものとする。
②発電電動機が電動機入力300MWで揚水運転しているときの流量[m3/s]を計算せよ。
【①の計算方法】
揚水時の流量を、水に必要な動力を
とすると、公式より以下のとおり。
(12)
揚水時間のとき、所要電力量
となる。
また、揚水量であるから
(13)
よって、所要電力量の式に代入すればが求まる。
(14)
【②の計算方法】
(15)


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