電験3種の電力分野における電力分野「火力発電所」の対策・計算問題についてまとめました。
汽力発電所の出力
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電力
項目 | 概要 |
---|---|
発電端電力PG | 発電機で発電された電力 |
送電端電力Ps | 外部へ送電する電力 |
所内電力PL | 発電所内で使用する電力。発電端電力PGの一部を使用するため、「PG=Ps+PL」が成り立つ。 |
所内率L[%] | 発電端電力PGに対する所内電力PLの割合。「L=100×PL/PG」「Ps=PG(1-L)」が成り立つ。 |
効率
項目 | 概要 |
---|---|
タービン効率ηt | タービンへの入力(蒸気エネルギー)を出力(発電機を回させる機械的エネルギー)にどれだけ変換できたかの割合を示す。 |
タービン室室効率ηT | タービン室で失った熱エネルギー(ボイラで発生させた蒸気の熱量)を出力(発電機を回させる機械的エネルギー)にどれだけ変換できたかの割合を示す。 |
公式
(1)
パラメータ | 概要 |
---|---|
ηB | ボイラ効率[%] |
ηt | タービン効率[%] |
ηT | タービン室効率[%] |
ηG | 発電機効率[%] |
ηs | 送電端効率[%] |
Z | 蒸気量[kg/h] |
H | 燃料発熱量[kJ/kg] |
B | 1時間あたりの燃料消費量[kg/h] |
hs | ボイラ出口の蒸気の比エンタルピー[kJ/kg] |
hw | 給水の比エンタルピー[kJ/kg] |
Pt | タービンの機械的出力[kW]=[kJ/s] |
PG | 発電端電力[kW]=[kJ/s] |
PL | 所内電力[kW]=[kJ/s] |
L | 所内率[%] |
復水器の損失
復水器は、蒸気(気体)を水(液体)に戻し、体積を激減させて復水器内を真空に近い状態にします。
これにより、蒸気をタービンの入口から出口(復水器入口)に向けて流すことができ、熱効率が向上しますが、同時に蒸気を水に戻すために捨てられる熱量(損失)も大きくなります(最も大きなエネルギー損失が生じるのが復水器)。
つまり、復水器の損失とは「復水器の冷却水が持ち去る熱量」を意味します。

【例題】送電端電力量、発電端効率
定格出力350MW(所内率Lは2%) の火力発電所にて、発電機が以下のような運転を行ったとき、0〜24時の間の送電端電力量の値WS[MW⋅h]を求めよ。
また、0〜24時の間の間に発熱量 54.70 MJ/kg の LNG (液化天然ガス)を770t消費したとすると,この間の発電端熱効率の値 [%]を求めよ。
時刻 | 発電機出力 [MW] |
---|---|
0 ~ 7 時 | 130 |
7 ~ 12 時 | 350 |
12 ~ 13 時 | 200 |
13 ~ 20 時 | 350 |
20 ~ 24 時 | 130 |
● 発電端電力量の合計WG[MW⋅h]を表より計算する。
WG=130×7+350×5+200×1+350×7+130×4=5830 [MW⋅h]
● 所内率 =0.02より,送電端電力量WS[MW⋅h]を計算する。
WS=(1−L)WG=(1−0.02)×5830=5713.4[MW⋅h]
● 燃料消費量B=770[t],燃料発熱量H=54.70[MJ/kg]より、0〜24時の入熱Qi[MJ]を計算する。
Qi=B×(H×1000)=4.212×10^7 [MJ]
● 燃料使用量から換算した熱量 = Qi/3600=[MW⋅h]
※1[kW⋅h]=3600[kW⋅s]=3600[kJ]より
● よって、発電端熱効率ηp=(発電端電力量の合計WG/燃料使用量から換算した熱量)×100=49.8%
※発電端電力量の合計WG = 5830[MW⋅h]
補足
1 [kW⋅h] は 1 [kW] の電力で 1時間運転した時の電力量です。
また、1 [W⋅s]=1 [J] なので、1[kW⋅h]=3600[kW⋅s]=3600 [kJ]になります。
【例題】タービン出力及び海水温度
【問題】
復水器の冷却に海水を使用している以下の仕様の汽力発電所がある。復水器冷却水が持ち去る熱以外の損失は無視するものとすると、①タービン出力の値 [MW]②復水器冷却水の温度上昇の値 [K]はいくらになるか。
パラメータ | 値 |
---|---|
復水器冷却水流量 | 30[m3/s] |
復水器冷却水が持ち去る毎時熱量 | 3.1×10^9[kJ/h] |
海水の比熱容量 | 4.0 [kJ/(kg⋅K) ] |
海水の密度 | 1.1×10^3[kg/m3] |
タービンの熱消費率 ※タービン出力において1[kW・h]の電力量を得るのに消費した熱量 [kJ] |
8000 [kJ/(kW⋅h)] |
【解答】
● 電力kWと1時間当たりの熱量の関係は,「1[kW]=3600[kJ/h]」となる。
● 1[kW] で発電するために復水器に流れる熱量Qo=8000−3600=4400 [kJ/h]となる。
※8000kJのうち、3600kJが電気エネルギーに変換されるが、4400kJは熱エネルギー(蒸気)のまま復水器に送られる。
● タービン熱消費率qt、タービン入熱Qi[kJ/h]、タービン出力をPt[kW]とすると「qt=Qi/Pt」なので、タービン出力PT[kW]は以下のようになる。
PT=(3.1×10^9)/4400=704545[kW] ≒ 700[MW]・・・①
● 1[s]当たりに持ち去る熱量Q[kJ/s] は,温度上昇を Δ [℃] とすると,
Q=4.0×1.1×103×30ΔT=1.32×10^5×3600=4.752×10^8ΔT
● また、題意より復水器冷却水が持ち去る毎時熱量は3.1×10^9[kJ/h]なので、以下の等式から⊿Tが求まる。
4.752×10^8ΔT=3.1×10^9
ΔT=6.52[℃]・・②



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