【電験3種】絶縁耐力試験と計算例

電験3種の絶縁耐力試験と計算例についてまとめました。

【電技解釈15条】 高圧、特別高圧電路の試験電圧

絶縁耐力試験(耐電圧試験)とは, 電気製品(部品)の使用する電圧に対して十分な絶縁耐力があるかどうか(絶縁破壊しないか)を確認するための試験です。
電気製品は基本的に導体と絶縁で構成されており, 規定電圧を規定時間印加して絶縁破壊が起きなければ、十分な絶縁耐力を持つと判断します.
ここでいう絶縁破壊とは, 絶縁物に電圧を印加したときに急激な電流増加があるかどうかです(あれば絶縁破壊ありと判断).

高圧、特別高圧電路における絶縁耐力試験(電技 第15条に記載)には、電路と大地の間に10分間連続して試験電圧を加えます。
多芯ケーブルの場合、芯線相互間と、芯線と大地との間に試験電圧を加えます。

試験電圧は以下のフローで計算します.

① 使用電圧(公称電圧=その電線路を代表する線間電圧)から最大使用電圧Emを計算します。最大使用電圧Emは使用電圧が1kV以下ならその1.15倍使用電圧が1kVを超え500kV未満ならその(1.15/1.1) 倍となります。
② 計算した最大使用電圧Emから、以下表により試験電圧を計算します。

最大使用電圧 試験電圧
7kV以下 交流の電路:最大使用電圧の1.5倍の交流電圧
直流の電路:最大使用電圧の1.5倍の直流電圧、又は1倍の交流電圧
7kVを超え15kV以下(中性点接地方式) 最大使用電圧の0.92倍
7kVを超え60kV以下 最大使用電圧の1.25倍(※最低値は10500V)
60kVを超える 最大使用電圧の1.1倍(電験3種の対象外なので参考)

また、電線にケーブルを使用する場合、上表の交流試験電圧の2倍の直流電圧で絶縁耐力試験を行うことができます。

計算例

高圧受電設備(6.6kV)の電路の試験電圧を求めます。

① 電路の使用電圧(公称電圧=電路を代表する線間電圧)は6.6kVなので、最大使用電圧は「使用電圧×1.15/1.1=6.9kV」になります.
② 試験電圧は,表より 「最大使用電圧(6900V)×1.5倍=10350V」となります.

【電技解釈16条】 機械器具類の試験電圧

機械器具類の絶縁耐力試験の試験電圧は以下のフローで計算します.

① 使用電圧から最大使用電圧を計算する。使用電圧が1kV以下ならその1.15倍、使用電圧が1kVを超え500kV未満ならその(1.15/1.1) 倍が最大使用電圧となります。
② 最大使用電圧Emから、以下表により試験電圧を計算する。

種類 最大使用電圧Em 試験電圧
変圧器、開閉器、遮断器、電力用コンデンサ、計器用変成器、母線等 7kV以下 Em×1.5(最低500V)
変圧器、開閉器、遮断器、電力用コンデンサ、計器用変成器、母線等 7kVを超え60kV以下、Emが15kV以下の中性点接地式電路に接続するもの Em×0.92
変圧器、開閉器、遮断器、電力用コンデンサ、計器用変成器、母線等 7kVを超え60kV以下、上記以外のもの Em×1.25(最低1.05kV)
回転変流機 直流側のEm(最低500V)
回転変流機以外の回転機 7kV以下 Em×1.5(最低500V)
回転変流機以外の回転機 7kV超え Em×1.25(最低1.05kV)
整流器 60kV以下 直流側のEm(最低500V)
燃料電池・太陽電池モジュール Em×1.5(直流電圧)、またはEm(交流電圧)(最低500V)

【補足】電技解釈 15条、16条 の解説

電気設備の技術基準の解釈の解説」に、「電技 第15条【高圧又は特別高圧の電路の絶縁性能】の解釈(p24-26) 」と「第16条【機械器具等の電路の絶縁性能】 の解釈(p26-30)」について記載されています。

●絶縁耐力試験の実施が義務ではないことの説明

なお、本条をはじめ、この解釈で規定する電気工作物の絶縁耐力というのは、電気工作物の有すべき絶縁性能について規定しているのであって、絶縁耐力試験を行うことを義務づけているものではない。したがって、この解釈では「…
絶縁性能を有すること。」、「…耐える性能を有すること。」という表現を用いている。

●試験電圧を10分間加える件

電路に加わる電圧には、正常の運転中の常規電圧のほかに、1線地絡等の事故時の異常電圧、電路の投入又は遮断時の異常電圧、雷電圧の侵入による異常電圧等があり、絶縁破壊の多くは、これらの異常電圧が原因となって起こるものであるから、電路の絶縁は、常規電圧に耐えるだけでなく、これらの異常電圧を考慮して定めなければならない。
しかし、雷電圧に対する絶縁の強度を雷インパルス耐電圧試験によって試験することは、現場試験としては甚だしく困難である
ので、雷電圧に対しては避雷器の施設(→第37条)を規定するにとどめ、絶縁の良否を試験する試験電圧値は、事故時や電路の遮断時の振動性の異常電圧を対象として定められている。しかし、これらの異常電圧に対応する短時間の高電圧を現場試験として加えることは困難であるので、15-1表に規定する一定電圧を連続して10分間加えたとき、これに耐える性能を有するものであることを規定している。

●試験電圧を直流電圧にする場合は、交流試験試験の2倍にする件

第二号は、長距離の高圧用又は特別高圧用ケーブルの場合には、静電容量が大きくなり、交流を用いて絶縁耐力試験を行うには、大容量の電源設備が必要となってその実施が困難な場合が多いため、このような場合にはケノトロン等を使用して、比較的簡単に実施し得る直流試験を行ってもよいこととしている。また、この場合の試験電圧は交流試験電圧の2倍に耐えれば安全であると考えている。

【例題】交流絶縁耐力試験の対地充電電流

公称電圧6.6kV、周波数50Hzの電路に接続する高圧ケーブルの交流絶縁耐力試験を行う。
高圧ケーブルは3線一括で試験電圧を印加し、そのときの対地静電容量は0.2μFである。
このときの対地充電電流Icを求めよ。

① 電路の使用電圧(公称電圧=電路を代表する線間電圧)は6.6kVなので、最大使用電圧は「使用電圧×1.15/1.1=6.9kV」になります.
② 試験電圧は表より 「最大使用電圧(6900V)×1.5倍=10350V」となります。
③ 対地充電電流 Ic=2πfCV=2×π×50×0.2×10^-6 ×10350=0.65A

【例題】直流絶縁耐力試験の試験電圧と時間

以下のように電技解釈に従って使用電圧6.6kV、周波数50Hzの電路に使用する高圧ケーブルの絶縁耐力試験を実施する。
このとき、直流(①)Vの試験電圧を電路と大地との間に連続して(②)分間加える必要がある。

①の求め方
最大使用電圧=公称電圧×(1.15/1.1)=6900V
交流試験電圧=最大使用電圧×1.5=10350V
直流試験電圧=交流試験電圧×2=20700V

②10分間

【例題】高圧ケーブルの絶縁耐力試験に必要な皮相電力

下図のような試験回路で高圧ケーブルを3線一括で交流試験電圧を印加して絶縁耐力試験を実施することを考える。
各試験機器の損失を無視するとき、必要な皮相電力の値は(①)kVAとなる。

3線で220[m]=0.22[km]より

静電容量C[F]=3\times 0.45\times 10^{-6}\times 0.22=0.297\times 10^{-6}

Cに50Hzの試験電圧10350Vを加えたときの電流Icは
Ic=2πfCV=0.965[A]

よって、絶縁耐力試験に必要な皮相電力Sは、

S = 試験電圧(10350V) × Cの電流(0.965A) = 9988VA = 10kVA

【補足】Excel計算シート

【補足】逆変換装置(PCS)は、太陽電池発電設備(発電所)とそれ以外のものとで、絶縁耐力試験の要求が異なる

近年増加している太陽電池発電設備や風力発電設備等の分散型電源については、それらを系統に接続するにあたり、交流・直流を変換する電力変換装置が必要となります。

電技省令第5条第2項で「事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない」と定められています。

(電路の絶縁)
第五条 電路は、大地から絶縁しなければならない。ただし、構造上やむを得ない場合であって通常予見される使用形態を考慮し危険のおそれがない場合、又は混触による高電圧の侵入等の異常が発生した際の危険を回避するための接地その他の保安上必要な措置を講ずる場合は、この限りでない。
2 前項の場合にあっては、その絶縁性能は、第二十二条及び第五十八条の規定を除き、事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない。
3 変成器内の巻線と当該変成器内の他の巻線との間の絶縁性能は、事故時に想定される異常電圧を考慮し、絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない。

そして電技解釈16条では、電技省令第5条第2項の規定を満たす具体的な仕様が例示されています。

このうち、太陽電池発電設備に接続する逆変換装置(電力変換装置の一種)の絶縁性能については、電技解釈第16条第6項第5号に以下のとおり定めがあります。

【機械器具等の電路の絶縁性能】(省令第5条第2項、第3項)
第16条 変圧器(放電灯用変圧器、エックス線管用変圧器、吸上変圧器、試験用変圧器、計器用変成器、第191条第1項に規定する電気集じん応用装置用の変圧器、同条第2項に規定する石油精製用不純物除去装置の変圧器その他の特殊の用途に供されるものを除く。以下この章において同じ。)の電路は、次の各号のいずれかに適合する絶縁性能を有すること。

第16条 (略)
2〜5 (略)
6 (略)
⼀〜四 (略)

五 電力変換装置が、1,500V以下の直流電路に施設されるものである場合は、電気学会電気規格調査会標準規格
JEC-2470(2005)「分散形電源系統連系用電力変換装置」の「6.2 一般試験」の交流耐電圧試験により絶縁耐力
を有していることを確認したものであって、常規対地電圧を電路と大地との間に連続して10分間加えて確認し
たときにこれに耐えること。

つまり、JEC-2470(2005)で定める試験方法により絶縁耐力を有していることを工場試験の結果等で確認できれば、現地試験では常規対地電圧(定常時の電圧=通常の運転状態で電路と大地との間に加わる電圧=太陽電池発電設備で通常時に発生する電圧)を電路と大地との間に連続して10分間加えて耐えることを確認すれば技術基準を満たすことになり、別途、試験電圧装置の用意が不要となり、事業主の負担を軽減できます。
また、条文のとおり「直流電路に施設されるものである場合」に限定されていますので、交流側(低圧)の耐圧試験は不要です。

【補足】
ただし、太陽電池発電設備以外の分散型電源に接続する電力変換装置であって、使用電圧が低圧のものには、電技解釈第 16条第6項第1号イや同条第6項第3号等が適用され、電路の種類に応じて、以下の表のとおり、最大使用電圧の1倍~1.5倍の試験電圧を電路と大地との間に連続して10分間加えたときに、これに耐える性能を有すること、が求められており、現地での絶縁耐力試験について、太陽電池発電設備に接続する逆変換装置に比べて、より厳しい仕様が例示されています。

【電技解釈第16条第6項第1号イ、第3号】

開閉器、遮断器、電力用コンデンサ、誘導電圧調整器、計器用変成器その他の器具(第1項から第5項までに規定するもの及び使用電圧が低圧の電気使用機械器具(第142条第九号に規定するものをいう。)を除く。以下この項において「器具等」という。)の電路並びに発電所又は変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所に施設する機械器具の接続線及び母線(電路を構成するものに限る。)は、次の各号のいずれかに適合する絶縁性能を有すること。
一 次に適合するものであること。
イ 使用電圧が低圧の電路においては、16-4表に規定する試験電圧を電路と大地との間(多心ケーブルにあっては、心線相互間及び心線と大地との間)に連続して10分間加えたとき、これに耐える性能を有すること。

(略)

三 日本電気技術規格委員会規格 JESC E7001(2018)「電路の絶縁耐力の確認方法」の「3.3 器具等の電路の絶縁耐力の確認方法」により絶縁耐力を確認したものであること。

16-4表

電路の種類 試験電圧
交流 最大使用電圧の1.5倍の交流電圧(500V未満となる場合は、500V)
直流 最大使用電圧の1.5倍の直流電圧又は1倍の交流電圧(500V未満となる場合は、500V)

参考:「電気設備の技術基準の解釈」の一部改正について
参考:太陽電池発電所の使用前自己確認制度について

【電験3種とは】出題範囲と対策まとめ
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