「フランジとウェブ」「強軸と弱軸」「一縁支持と二縁支持」の違い、役割、効果について解説します。
「フランジとウェブ」「強軸と弱軸」の意味と違い
「フランジとウェブ」「強軸と弱軸」について理解を深めるために、以下の図を元に違いを説明します。
フランジとウェブ
H鋼材などの強度計算を行う際に、「ウェブ」や「フランジ」という単語が登場します。
それぞれの違いは以下のとおりです。
用語 | 概要 |
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フランジ(flange:突縁) | 挟む板の部分。梁として用いる場合、曲げモーメントMの多くを負担する役割をもつ。フランジの厚さを大きくするほど、曲げモーメントMに強くなる。H型鋼だと、フランジは上下2つあり、それぞれ「上フランジ」「下フランジ」という。H形鋼の上から曲げモーメントMを加えた場合、応力分布では上フランジには圧縮応力、下フランジには引張応力が発生する。 |
ウェブ(web:水かき状のもの) | 挟まれる板部分で、せん断力の多くを負担する役割もつ。H形鋼の上から曲げモーメントMを加えた場合、曲げモーメントが0になる部分(ウェブの中立軸)でせん断力が最大になるため、ウェブがせん断力を負担することになる。ウェブ厚を大きくするほど、せん断力に強くなる。H型鋼だと、上下のフランジに挟まれた部分。 |
強軸方向と弱軸方向
強軸方向と弱軸方向の違いは以下のとおりです。
用語 | 概要 |
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強軸方向 | 曲げに強い部材の軸方向。つまり、部材の強軸方向(強軸回り)に荷重や曲げモーメントが加わったときには変形にしくい。H鋼材の場合、図のように荷重P1に対しては変形にしくい。 |
弱軸方向 | 曲げに弱い部材の軸方向。強軸方向の直交方向になる。つまり、部材の弱軸方向(弱軸回り)に荷重や曲げモーメントが加わったときには変形にしやすい。H鋼材の場合、図のように荷重P2に対しては変形にしやすい。 |
部材を柱や梁に用いる場合、強軸方向で荷重を受けるように部材配置を行います。
例えば、H鋼材を梁に用いる場合、荷重は固定荷重(垂直方向)が多いため、一般的に2つのフランジが上下に来るように配置します。
しかし、風圧荷重(水平方向)など、弱軸方向に対しても荷重が発生するため、それらについても検討が必要となります。
強軸と断面二次モーメントの関係(H鋼材の例)
上図のような、h=75mm、b=50mm、t1=10mm、t2=10mmのH鋼材について、断面二次モーメントを計算すると、Ix=120[cm^4]、Iy=21[cm^4]となります。
強軸と弱軸
強軸x回りの断面二次モーメントIxのほうが、弱軸y回りのIyよりも6倍程度大きく、強軸方向の荷重を受けたときの曲げに対する強さは、弱軸方向に比べて強いことがわかります。
フランジとウェブ
また、t1=0mmのとき、Ix=106[cm^4]、Iy=21[cm^4]となります。
つまり、ウェブは曲げに対する強さにあまり影響しない(曲げモーメントの負担が小さい)ことがわかります。
フランジと座屈の関係(H鋼梁の例)
図のようにH鋼を梁材として用いた場合、H形鋼の上から荷重が作用する場合、強軸回りに曲げモーメントが働きます。
応力分布では上フランジには圧縮応力、下フランジには引張応力が発生します。
このとき、圧縮応力が発生する上フランジ側が単純に鉛直方向(強軸方向)にはらみ出すだけでなく、水平方向(弱軸方向)にもはらみ出そうとします。これを横座屈といいます。
用語 | 概要 |
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座屈 | 圧縮応力が作用すると、はらみ出す現象。 |
横座屈 | H鋼などの強軸と弱軸方向で断面性能(断面二次モーメントなど)が異なる部材の場合、許容曲げ応力に到達する前に、圧縮応力を受ける部材が弱軸方向にはらみ出す現象。 |
強軸方向は曲がりにくいため、曲がりやすい弱軸方向にも力が働いてしまうイメージです。
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